キリリクドリーム小説・183000番・蝶様へ
『悪戯な吹雪』



歯がガジガジと音を立てた。
身を丸くして、ぎゅっと自分を抱きしめてみるものの、寒さは凌げそうにない。
ははぁっと小さく溜息を吐いた。
それは見る見るうちに白い靄となって空気中を漂う。
出ていっては消えていくそれを眺めながら、与えられた毛布に顔を埋めた時、目の前で赤い火が灯った。
「まぁ…これで少しはマシでしょう」
古びた暖炉にやっと火を点けることができたユキトがに振り返る。
は青白く染まった唇を微かに動かした。
「無理しないでください。お礼なんていいですから」
軽く溜息混じりに答え、の隣に座る。
「雪は止みそうにありませんね」
窓を眺めながらユキトが言葉を続けた。
「…悪いのは僕です。
僕がふらふらしなければ、貴女まで離れることは無かったのに。
…というか、何故僕なんかの後を追ってきたんです?」
ユキトの疑問には身を寄せながらぎゅっとユキトの服を掴んだ。
「…ふらふらしていたからですよ。
本当に…ユキトさんは相変わらず」
―放って置けない人ですね。
そう紡ごうとした唇を急にユキトが塞ぐ。
まるで彼女の言葉の続きを察していたかのようだ。
「貴女に過保護っぽい口調を言われるのは僕としては不服なので」
付け加えてから、の毛布の端を掴んで一緒に同じ毛布に包まれた。

二人以外存在しない山小屋は静かだった。
季節は丁度冬至。
それなのに山登りをしたのはわけがあり、ユキトがどうしても頂上から見える景色をに見せたいといったためだった。
他の精霊騎士の中で反対したものもあったが、カインやジオもその景色を綺麗だと言ったため、も見てみたくなった。
それで他にもフィラントやユアン、フォードなどのメンバーも誘って山登りを決行したのである。
雪が積もりやすいこの山を登ることは危険だと判っていたため、細心の注意は払っていたのだが…。
景色に目を奪われたユキトはふらふらと単独行動をとってしまった。
元々グループ行動自体が苦手なので、その行動が周囲に迷惑をかけているとは気づかず…。
そうして彼の後を追ってしまったは一緒に迷子になってしまう。
間が悪いことに雪が降り始め、やがてそれは強い吹雪となった。
そして今に至る。

二人はパチパチと小さく音を立てる暖炉を眺めながら、座っていた。
隣り合わせに座って、同じ毛布に包まって…。
そうしているだけで、少し幸せな気分になる。
「遭難…なんて」
突然ぼそりとユキトが言葉を漏らす。
「きっと、陛下を始め城に残っていたメンバーも大慌てで明日集まってくるでしょうね」
それから小さくぷっと吹き出した。
「…え、何故そこで笑うんですか?!」
がつっこみをいれると、ユキトは余計にツボにはまったのか、けらけらと笑い始める。
「…あははっ、だって、考えてみてもください」
面白そうに目を細めながら、の髪をそっと撫でた。
「彼らは大慌てでしょう?大事な姫君が僕なんかと一緒に遭難しちゃうんですから。
まぁ、運良く空いていた山小屋を見つけましたし、食料も多少は持ち合わせています」
「はぁ…」
―だからどうしてそれがそんなにツボに…
頭の中で?マークを並べていると、の肩に腕を回してユキトがもう一度キスを浴びせてきた。
「…わかります?
僕達は別に生死の危険にまだ慌てる必要はなくて…。
…そして、こんな山小屋で二人っきりなんです」
暖炉の火のおかげで少しだけ体温が上昇したのか、それとも別の何かか…。
は急に顔が火照っていることに気づいた。
「…あの人たちの顔を思い浮かべるだけで…愉快でしょうがないですね」

――今の状況が…。


ふっと口角を上げて笑ったユキトの顔に、は少しだけ眩暈を覚えながら瞳をそっと閉じた。
山小屋に叩きつくように吹雪いているモノは当分終わりそうにない。
それと同じように目の前の青年の悪戯っぽい時間も…きっと同じように終わらないだろう。


こちらは183000番を踏まれた蝶さまのリクエストでした!!
ありがとうございましたv
久しぶりにPCサイトで夢でしたね(笑)
楽しかったですよ〜ウフフ☆
お題はユキト×シキ。
『冬至・山・遭難』でしたー!
気に入っていただければ幸いです。