トゥエルブ☆ナイツ人気投票結果・第一位アシュラ
『空回りしては絡まる』



「…はぁ」
アシュラくんが吐いた息はとても重みのある溜息だった。

うん、判ってます。
判っているんだよ?
それが私に対しての嫌味を含む訴えだってことは!!



――いつもと変わらない午後。
私は午前の間に厨房へ行って、ミイさんとわらび餅を調理。
我ながら上手くいったなという改心の出来であるそれは、アシュラくんの食べてもらおうと思っていた。
前々から、アシュラくんがわらび餅が好きであることもリサーチ済みだったから!
「うふふ…」
ちょっと妖しい笑みを浮かべながら、私は綺麗にラッピングしたものを見つめる。
朱色の和紙でわらび餅が入っている容器を包んで、金色のリボンで結んだ。
アシュラくんのカラーをイメージしてみたんだけど、まぁ…それは彼がいつも朱色の着物を着ているからってだけど。
好きな色とかはあまり知らない。
でもいつも着ているってことは好きなのかなって思う。
…それに朱色の瞳と合っていて、私にはぴったりだと思っていたから。

…少しだけ怖い、燃える様な朱色。
夕日が閉じ込められているんじゃないかってぐらい、鮮やかな…色。

「…おっす」
ちょっとぼーっとしながら歩いていたらいつの間にか離れについていたみたいだった。
そして見事にアシュラくんとばったり。
だから思わず、驚いて大声を張り上げた。
「きゃああああああっ!?」
…あはは、大声って言うか、うん。悲鳴っていうか。
案の定、アシュラくんは不機嫌そうに耳を押さえて私を睨む。

「なんなんだよ、!!」

名前を呼ばれてびくっとしながら、私は背筋を伸ばした。
「あはは、ごめんなさい」
少しだけ愛想笑いを浮かべて謝ると、アシュラくんはそっぽを向いて頭をかく。
「探し人にばったりだったから…」
「あ?」
アシュラくんは私の呟きにクエスチョンマークを浮かべて眉を寄せた。
「うん、だから、アシュラくんを探していたの」
直球で投げると、やっと言葉の意味に気づいたらしく頬を染める。
少しだけ照れたようなその仕草が可愛いと思うのは、私の勝手な解釈なのかな?
でも、可愛いものは可愛いよね。
「…何笑ってんだよ、おい」
―とす。
頭上にチョップが振り下ろされた。
私のにやけ顔が気にいらなかったみたい。
というか、私がアシュラくんを可愛いって思ったのがばれたみたいだった。
「…で?」
「え?」
今度は私の頭の上にクエスチョンマーク。
「え?じゃねぇよ!!俺に用だったんだろ?」
もう一回チョップ。
うぅ、手加減してつっこみを入れてくれるのは判るんだけど、少し痛いよ。
「…お前が悪い」
私の訴えに気づいたのか溜息が吐き出された。
「うー。えっとね、あの…これを」
私は笑って例の容器を取り出す。
「…あん?」
きょとんとしているアシュラくんの前で私は笑いながら『開けて』と促してみる。

「…あぁ、わらび餅。…サンキュー!」

満面の笑顔だった。
最上級の笑み。
アシュラくんはよく怒っているけど、笑顔が反則的に可愛いと思う。
…怖いからこれは絶対に内緒だけど。
「つかよく俺の好きなものがわかったな」
「あはは、メイドさんにストーカーさんがいるのです」
「…げ」
…かくいう私もそのストーカーさんのおかげで情報ばっちりなんですけど。
「って、あ」
風が急に吹いた。
強く。
たったそれだけで、横に置いていただけの和紙が飛ぶ。
宙を舞い…空を目指しているみたいに…
「だ、だめっ!!」
何故か慌てて私はその朱色の姿を追い求めてジャンプ。
指先に和紙のくしゃくしゃな感触がして…。

「きゃあっ?!」
「やると思ったよ、馬鹿女っ!!」

ずるり…。
何もないところで着地失敗。
そのままアシュラくんの着物の裾を掴んでしまう。
しっかりとしたアシュラくんの身体があたった。
あぁ、男の人なんだなって考えつつ、もう一回着物の布地に膝まで滑らせて転倒。

「――…っ」
「うっ…」
柔らかい感触は、アシュラくんの髪の毛。
白と黒の混じる綺麗な色彩。
そして…強い朱色の…。

「わわっ!!ごめんなさいっ!!」
慌てて上半身を起こした瞬間、私はびっと首筋に痛みが走ったのを感じた。
「動くな…」
アシュラくんが溜息を吐き出しながら、私の腕を掴む。
「えっと…」
間近に綺麗なアシュラくんの顔。
そして、痛みの先は髪の毛。
「…はぁ」
アシュラくんが吐いた息はとても重みのある溜息だった。
よくよく見れば、私とアシュラくんの長い髪の毛の先が…絡まっている。
うん、見事綺麗にがっちり結び目。
えぇっと、どうしてこうなるのかな…と苦笑しつつ、もう一回アシュラくんの胸の中に顔を埋めた。
ちょっとだけアシュラくんの匂いがする。
?!な、何して…」

――解けなくても良いよ。

紡ごうと思ったけど、そのまま飲み込んで。
アシュラくんの心臓の音が私に聞こえるように、飲み込んだ言葉も聞こえたらいいなって…我儘、かな。

…なんて。


第一位アシュラでした。
あうう、すみません。
よくわからない物体が…。
でもこの後の二つも意味不明なものが…。

あぁ、風邪の所為で脳細胞死んだな…とか思ってます。はい。
ごめんなさい。