トゥエルブ☆ナイツ人気投票結果・第二位カイン
『微熱と指先と…』



――微熱は続いている。
ずっと、ずっと続いている。
…唇にそっと触れてみた。
自分の指でなぞるように。
…彼がしたように。

カインさんが…私にしたように。




――空は快晴。
入道雲がもくもくと美味しそうに空に浮かんでいる。
小鳥達が歌を歌いながら、そんなキャンパスを泳ぐように飛び回っていた。

そんな窓の外を眺めながら、私は少しだけ溜息を吐く。
不注意。
たった少しだけムリをしただけ。
ううん、自分の中ではそんなにムリしていたなんて思っていなかった。
だけど、頑張ろうとする気合は空回り。
私の身体は遂に悲鳴を上げて、軋んだのだった。

「あぁ…、暇だなぁ…」

ベッドから抜け出して、窓の外を眺める。
午前中には体調は回復していき、眩暈もなくなっていた。
だからまた頑張ろうと思ったんだけど、マイさんに笑顔でストップされる。
『今日一日は安静にしてくださいね?』
マイさんの穏やかな笑顔の中には女豹のような強さがあると思うのは私だけだろうか。
妙な凄みがあって、絶対に逆らえない。
マイさんは常に笑顔なのだけど。
…逆にそれがたまに怖かったりする。
うん、ほら…特にユアンくんの話をしたときとか。

―コンコン

遠慮がちにドアが叩かれた。
「はい?」
慌ててベッドにもぐりこんで、私は大人しくしていたかのように扉の向こうに声をかけた。
「…入っても、構いませんか?」
また遠慮がちな口調。
低い音色だったけれど、どこか艶のある綺麗な男性の声。
…カインさんだ。
私はすぐに理解する。
皆の声は特徴的で独特だからわかりやすい。
そして…カインさんの声は落ち着きのある、艶やかな音色で大好きだったから。
…だからすぐにわかった。
「は、はい…っ」
ちょっとだけ声が裏返っちゃったけど、私は咳き込んで誤魔化した。
「…失礼します」
扉がゆっくりと開いた。
隙間から滑り込むようにカインさんが部屋に入ってくる。
ほんのり薄暗くなっている部屋の中に立つ、カインさんの姿は…どこか私の鼓動を早くする副作用を持っているみたいだった。
「…えっと」
カインさんは少し困ったように笑ってから、私のベッド横に膝を付く。
すぐ近くに整った顔があった。
眉をほんのり歪めて、戸惑っているのか頬は微かに淡いピンク色に染まっていて。
「…大丈夫、ですか」
紡がれた言葉は特に優しかった。
「…はい」
居心地のいい音色。
大好きな…気持ちいい音。
「倒れられたと聞いて、心配しました」
優しい口調でそう言ってから、カインさんは私の額に冷たい手を置いてくれた。
「…熱はそれほどないようですね」
実はさっきまで窓の外を眺めて暇を持て余していました。
そんなことはいえず、私はこくりと首を縦に振る。
「良かったです」
ふわっと空気が流れた。
綺麗に整った表情が穏やかに微笑む。
目を細めて、口の角を上げて。
…あぁ、絵本で見た王子様ってこんな人だーって馬鹿だけど考えちゃった。
だって、本当にその笑顔は優しくて。
私だけに向けてくれているのがすごく嬉しくなる笑みだったから…。
「…さま」
そっと紡がれた名前。
額に触れていた手が微かに離れて、そのままもどかしそうに指先で私の唇に触れる。
「…息が、熱い…ですね」
優しくなぞって。
指が私の唇を…なぞって。

たったそれだけで全身がぞくっとした快感に襲われた。
微熱がどんどん身体中を巡っていくのが判る。

―パタン…

閉じた扉の向こう側に響く去っていく足音。
それだけを耳にしながら、私は真っ赤になってベッドの中に蹲っていた。
小さく丸くなって。
感触を確かめる。

…カインさんの冷たい指が、ただ唇を触れただけなのに…。
まるで甘いキスを降り注がれて、あの力強い腕で抱きしめられてしまったかのよう。
たった一本の指先だったのに…。

…微熱があるみたいに火照っていた。


第二位カイン氏。
微熱王子(ぇ)
…うふふ、題名一瞬それに仕掛けて、なんかそれって何かの本?!
って思って慌てて修正(ぉぃ)
キスもしてないのに何故かエロ雰囲気が漂っています。
でも意味不明ですね。
一番マシですけどね(ぇ)