フェンリル・ストーリー人気投票3位特典
『愛情表現』






そっとその名を呟く。

すると、彼女は少し頬を赤らめて俺に振り返った。
少し不機嫌そうなその表情に、なぜか愛しさが募っていく。

ぎゅっと溢れた愛情を押さえ込むように、俺は彼女を抱きしめた。

「な、な、なっ!!」

――ドガッ!!

「くっ!!」

物凄い勢いで足を踏まれる。
は俺が痛くないとでも思っているのだろうか?

……いや、違うか。本気で怒っているんだな。

俺は苦笑を浮かべた。

腕からすり抜けた女性は、プルプルと全身を震わせながら、俺を睨みつけている。

「あぁ、だめだよ、。そんな顔をすると、美しくな」

「うるさいーっ!!このド変態っ!!」

――ガスッッ!!!!!


今度は彼女が持っていた、食料の入った布袋が、勢いよく俺の顔面にヒットした。

な、何をするんだ!
俺の美しい顔が台無しじゃないか……っ!

そんなことを考えながら、髪を整え、俺は真剣な表情でを見つめた。
少し鼻の上がヒリヒリするが、この際、放っておこう。

……」

大真面目に発した声に、は身構えつつもまた頬を染める。

「……愛しているよ、君を」

真紅の薔薇の花を捧げて。
彼女の手の甲にキスを降らす。

肌理細やかな質感は、実に惜しい原石。

気丈な瞳も。
膨らんだ蕾のような唇も。
流れるような髪も。

全部愛しくて。


「あぁ、。今すぐ、君の全てを食べてしまいたいね」

この美しさを独り占めしたくて。





「あ、あ、あ、あんたの脳味噌は、蛍光色のピンク色なんじゃないの?!この超絶ド変態キモ男ー!!!!」

――ドカッ、ガスッ!!ドゲシッ!!!!





……あぁ、君の仕打ちは、冗談じゃないほど酷いけれど。

それが君の愛情表現だということは、ちゃんとわかっているつもりだよ。


実は嫌われているんじゃないのか?
これは??

というぐらいですが、ハーツさんが幸せそうなんで。放っておきます。
短いですが、読んでくださってありがとうございました!!