キリリクドリーム小説・75000番・スズミ様へ
『野良猫』



最近、奇妙な拾い物をした。

ふと立ち寄っよった港で、その捨て猫は船に潜り込んだらしい。
痩せこけていたが、強い瞳を持つ猫だ。
そのか細い身体のどこに逞しい力強さを持つ魂を宿しているのか判らない。
だが、その野良猫はあまりにも貧弱であまりにも粗雑だった。

栗色の髪を短く切りそろえ、いつの間にかジャグルの下で一番の働きを見せている。
あいかわらず、あの強い光を放つ瞳は健在だった。


「…君はどうしてこの船に乗った?」

夜風が冷たく身に染みる暁夜に俺はふと興味を持って口を開いた。
我ながら珍しい事をしたと思う。
勝手に潜り込んできた野良猫にそれ程興味はなかったから…。

「…えっと…」

猫は一度躊躇うように口篭もってから、少し低めのトーンで言葉を続ける。

「俺、…ずっと貴方に憧れていたんです!」

「へぇ、そう?」

「はい!大海賊でありながら義賊を貫く貴方に―――」

「ふふ、見た目と同じでつまらない答えだね…」

「…え」

猫はキョトンとした表情で俺を見上げる。
口角を上げて、微笑を浮かべながら俺はそのまま添えた。

「俺に憧れていた?…興味を持っていてくれたことには礼を言おう。ただし…偽られるのは嫌いなんだ」

「……」

猫は初めて会った時のように唇を少しだけ震わせて、きっと俺を真っ直ぐに睨みつける。
そう…この表情だ。
この強い光を放つ瞳が一番に輝きを取り戻す瞬間。
それが今だった。

俺はくくっと小さく肩を震わせながら、歯を食いしばった猫を見つめ返す。

「…そ、そんな些細なことを気にさせないように…俺は、俺は…貴方に認められるっ!」

強靭なまでの意志。
―――本当にどこにそんな力を蓄えているんだい?

俺は苦笑しながら、肩を竦めた。

「ふふふ、しょうがない野良猫だねぇ」

「……」

「…全くしつけがなっていないようだ…」

俺はそう言いながら踵を返した。
猫は必死に俺の背中にあの強い視線を送りつづけている。

「俺は…生憎、美少年だろうが男には興味ないのだよ」

「……」

「…認められたいのなら、覚悟をしなさい。俺は君をかまう事はしない」

「…はっ、はい!」


バタン…
扉を閉めると、ランプの明かりだけがゆらゆらと揺れていた。
俺はその火を眺めながら、笑う。
船に乗っている小さな猫に乾杯しよう。
赤ワインの瓶を傾けて、その血のような液をワイングラスに注ぐ。
――残念なのは女として俺の上で転がせない事か。

「…ふふ、いつまで隠しとおせるかな?…見物だね」

野良猫の名前はしらない。
知っているのはあの強い光を放つ瞳が美しいということだけ…。


こちらは75000番を踏まれたスズミさんのリクエストです♪
リクエスト内容は、新設定ヒロインちゃんで。
お相手はダーダイル氏。キーワードは『大海賊に憧れる下っ端海賊・男装少女・ダーダイル視点』でしたv
そんなわけでダー様視点でやらせていただきましたv
いかがだったでしょうか?
少し短めになってしまったのが本当に申し訳ないのですが、男装してまで頑張っている少女に手を出すのは…(爆)
そんなダー様はあまりにもしょうがなさすぎなので(笑)こんな感じにしましたv
かっこいいヒロインちゃんになっていればいいのですが…。
というかスズミさんに気に入ってもらえたらば幸いです。