キリリクドリーム小説・140000番・ちぃ様へ
『桜色の夢』



それは麗らかな午後。
日差しも穏やかで、艶やかな夢へと誘う絶好の機会。

…リリアトスはそっと眩しそうに目を細める。
それから、優しい微笑を口元に浮かべながら、愛しい彼女の肩に毛布を掛けてあげた。
彼女――は眠っている。
どんな夢を見ているのか詳しくは覗くことはできないが、彼女の幸せそうな表情から夢の分類はできた。
…、君は…幸せ、なのかな」
ふと、らしくない言葉が漏れる。
思わず、リリアトスは周囲の気配を窺って誰も聞いていないことを確かめてしまった。
綺麗な細く長い指で、の髪に触れる。
桜色に染め上げたかのような美しい桃色の髪。
彼女がうつ伏せになっているせいで、無造作に机の上に髪が毀れている。
まるでそこだけが小さな絨毯。
リリアトスはまた優しく笑ってから、彼女に軽くキスをした。

――初めて会ったときも、君は転寝をしていたよね。

あの桜並木。
永遠に枯れることのない約束の地。
フィーゼ島の神秘といっても過言ではないあの思い出の場所…。
そこで彼は出会ったのだ。
赤い衣も纏った美しき桜の精霊に。

――愛を誓ったのも…そこで…

リリアトスは鼻腔を甘い香りが過ぎた気がした。
一体何の香りだったかは思い出せない。
そっと瞼を閉じ、その香りの正体をつかもうと集中することにした。

…コツン。

幾分経過したころだっただろう。
リリアトスは急に何かを後頭部に投げつけられた気がした。
不思議な感覚にとらわれながら、ゆっくりと振り返る。
いつの間にか大きな桜の木の下に小さな子供たちが立っていた。
二人は両手を大きく振って、何か叫んでいた。
ふいに手元を見ると、掌の中に小さなボールが納まっている。
「投げてよ!」
男の子の方がリリアトスに声をかけた。
どうやら、あの子供たちのもののようだ。
よく見ると、男女の子供たちは全く同じ顔をしていて、一卵性の双子みたいだった。
柔らかそうな金の髪に、淡い桜色の瞳。
彼にとって好感の持てる色彩を持った子供たち。
リリアトスは何か不思議な想いを感じながら、そっとボールを投げてやった。
空を飛んだボールが太陽のシルエットと重なったとき、まるでそれに吸い込まれたかのような感じを覚える。


「ん…、眩しい」
「そりゃあ、カーテンを開きっぱなしで寝ちゃったら、ね?」
リリアトスの呟きに誰かが答えた。
その音色を聞いて、リリアトスは我に返る。
だ。
彼の大好きな微笑を浮かべながら、は窓を開ける。
穏やかな風が通った。
「…あのね、報告があったんだけど」
が振り向かずに続けた。
「私、妊娠しちゃったみたい…」
「え?」
リリアトスは思わず、彼女のそばに歩み寄った。
「…本当に?」
「本当じゃないほうがいい?」
が不安そうに振り返る。
「まさか」
リリアトスは笑ってを後ろから大切そうに抱きしめた。
「…嬉しいよ。…ふふ、幸せにしなきゃいけない人が増えるわけだ」
「…そのままの貴方でいたら十分よ」
の言葉にリリアトスは心から嬉しそうに目を細める。
「でも、一気に二人も増えたら…ちょっと気合を入れないと」
「…二人?」
「双子だよ。…絶対」
「…変な確信」
「でも、それが真実」

二人はお互いの表情を見つめると、ふっと笑いあった。

――それは夏の始まりの小さなお話。
君たちを…幸せにするよ…。


こちらは140000番を踏まれたちぃさんのリクエストです♪
リクエスト内容は、リリアトス×アリア。キーワードは初夏・昼寝・夢でした。
不思議な内容になってしまいましたが…いかがだったでしょうか?
あんまりこうエロっぽい甘さではなく、本当にさくらんぼみたいな話になっていればいいなぁって(ナニソレ)
ほのぼのと、その中にも甘い愛情を!(ぇ)

…うぅ、こんなものですが、いかがでしょうか?!(土下座)