【出遭】


リリスはまた街中の中心に位置する公園に足を運んでいた。
ただなんとなく。
足が向いただけ。

「あ!おねぇさんなのだ〜!!」

リリスは何かほっとしたように表情を和らげて、明るい声の主に微笑む。

「こんにちは」

「おう、こんにちは、なのだ!」

赤毛の髪の少年は人懐っこい笑顔を浮かべると、リリスを大きく手招きした。
「今日は特別におねえさんに見せてあげるのだ」
「…何をかしら?」
バンバンの言葉にリリスは彼の元へ近づく。

太陽の光が反射して、少し彼の姿を見るのが眩しかった。

「あれ、なのだ!」

公園の端に立つ、大きな木。
その一番高い枝のところに、小さな鳥の巣があった。

「あぁ…可愛らしい雛ね」

白い翼を持つ、愛らしい姿。
まだ毛の生え揃っていない弱弱しい雛たちの姿。

(…何か)

自分の背中のある部位から激痛が伝わった。

「…っ!!」
「…おねえさん?!」

リリスは全身の力が急に抜けきってしまったかのようにその場に大きな音を響かせて倒れる。
意識を失い、背中の痛みに表情を歪ませながら…。

「ねぇ、おねえさん、おねえさんってば!」

バンバンの声だけが公園の中に響き渡った。
行き交う人間達は誰も彼らの元へ近づこうとはしない。

「大丈夫ですか…?」

途方にくれていたバンバンに誰かが声をかけた。
その誰かはそっと倒れているリリスを抱き上げる。

「…こんなところでは、ろくな介抱も出来ませんし。
少し、移動しましょうか?」
「あ…ありがとうなのだ!」
バンバンは安心して満面の笑顔をその人に向けた。
その人のかけている眼鏡が太陽の光を返す。

「…ヨーグル神父?」

人込みを掻き分けて金色の髪の青年は、騒ぎの中心となっている3人へ向けて声を発した。


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