【休息】
「リリスさん、おはようございます…」
「いい加減、目を覚ましたらどうだ?」
リリスはその音質の微妙に違う声に驚いて目を覚ました。
まず、普段着ている服とは少し違う格好をしている二人が視界に入ってくる。
「…どうしたの?」
その二人を交互に見つめながら、リリスは不思議そうに顔を歪ませた。
「…今日は収穫祭という行事があるんですよ」
優しい笑顔と音色でコルチェがリリスの手を握る。
「…リリスさん、折角だから参加しちゃいませんか?」
満面の笑顔。
そんな彼の後ろでルシフェルの方もリリスにウィンクを投げる。
「おら、ちゃっちゃと着替える♪」
それから、リリスの頭に肌触りの良い服が投げ渡された。
今まで見たこともない服だった。
「二人だけで買いに行くのはなかなか大変でしたけどね」
「まぁ、…俺は別に平気だったけどな〜♪」
対照的な二人の意見に小さく笑って、リリスはその服を見つめる。
「…ありがとう。…折角だから、私も行事に参加するわ」
遠い夢が現実になる日…。
『…どうして…』
小さな女の子の声がリリスの耳に入ってきた。
『どうして、人間と友達になっちゃいけないの…?』
秋の風が流れる。
耳元をくすぐるたくさんの人々の笑い声。
「リリスさん、どうしましょうか?」
「まぁ、適当に端からぜーんぶ見ていくってのはどうだ〜?」
「…あぁ、それはいいですねv…お前にしたら、いい案じゃないですか♪」
「…あのな〜っ」
コルチェの言葉にルシフェルが彼を睨む。
だが、その後に向けられたコルチェの冷たい笑顔にルシフェルは後悔を覚えるだけだった。
「…ふふっ」
貴女はそんな二人に微笑んで、二人と一緒にたくさんの出店を回る。
城へと続く道に並ぶ出店には、終わりなんてないかのようだった。
他の人間達がそうしているように、リリスもコルチェとルシフェルと一緒に笑う。
大声で笑って、遊んで、色んなものを食べた。
それは一時の休息。
優しい風が流れる時間…。
しかし、夕日が辺りを包み始めた頃。
それは突然にやって来た。
いや、その前兆はずっとやってきていた。
初めて二人の部屋で目覚めた時から…